代表質問⑦琵琶湖・淀川流域について

琵琶湖の水は、京都、大阪、兵庫の一部まで広く京阪神地域でも取水、利用されています。桜の時期は特に人が多くなる琵琶湖疎水の歴史に鑑みれば、京都の街が転換期を迎えた背景に琵琶湖が大きく寄与しているといえると思います。詳しくは、蹴上発電所、琵琶湖疎水記念館などへ足を運んでいただければと思います。

一方、琵琶湖・淀川流域は、利水だけではなく、治水対策の面では、いわゆる上流・下流の争いといわれてきました。近年の近畿全般の豪雨時に改めて琵琶湖・淀川流域の関係を関西広域連合でみていくことになり、研究会が立ち上がりました。私も、一度傍聴させて頂いております。

Q:琵琶湖・淀川流域対策に係る研究会では、どのよ うな趣旨で議論が行われているのか、今後どのよ うなことを期待しているのか。

A:この研究会は、昨年の台風 18 号による記録的な豪雨の発生を契機といたしまして、琵琶湖・淀川流域の主要な府県市を包含いたします関西広域連合がイニシアティブをとり流域構成団体はもとより、近畿地方整備局や他の流域団体などの協力も得ながら、流域が抱える様々な課題を整理し、流域自治体の認識共有を図るとともに、今後の取組の方向性等を検討しております。研究会の趣旨といたしまして、中川座長からは、『琵琶湖・淀川水系で考えると、琵琶湖が下流淀川全体に及ぼす影響は決定的である。下流は好きに水を使って垂れ流しているだけでいいわけではなく、琵琶湖の保全・再生に役立てる何かがいるわけで、広域連合に参加する各自治体がそれに向かって結束する、という認識がないとダメだと思う。進んでよいことを取り上げて、どんどん普及させることによって、新しい防災文化が育っていくと思う。』との御発言があったところです。

今年度は、琵琶湖・淀川流域の治水上の課題をテーマといたしております。この中で本県としての大きな課題は、琵琶湖で洪水を貯留し、下流の水害の防止や軽減に役立っていること、その一方で、琵琶湖沿岸では浸水被害が発生することであります。
昨年の台風 18 号の際に、41 年ぶりに瀬田川洗堰の全閉操作が行われたことで、このような琵琶湖・淀川流域に特有の課題が浮き彫りとなりました。
今後この研究会におきまして、これらの課題について、議論を深めていただき、中間取りまとめが行われ、連合委員会に報告いただくこととなります。
連合委員会におきましても、これらの課題を共有し、課題の解決に向けた議論が行われる様、私も努力して参ります。

Q:流域治水のソフト面での対策の進展について

A:条例制定後、自治会・学校・企業を対象に精力的に出前講座を実施しております。その出前講座におきまして、地先の安全度マップをもとにその地域の水害リスクを共有し、避難場所や避難経路の確認など、確実な避難行動に結びつく取り組みを進めております。また、県内各地で地先の安全度マップを反映いたしました洪水ハザードマップの作成についても取り組んでいただいているところです。

甲賀市黄瀬地区、米原市村居田地区では、水害に強い地域づくりモデル地区として避難行動のみならず、安全な住まい方の検討として地元の方と一緒に現地調査を行うなど、住民の皆さまとともに議論を始めたところです。
東近江市葛巻地区では、防災ファイルを作成し、タイムラインに基づいた実践的な避難訓練や訓練の検証作業などを継続的に実施されておられます。
草津市では、洪水の発生時に周辺住民や通行者の方々が逃げ遅れた場合に命を守るために一時的に退避できる避難所の確保のために、今年 10 月にホテルなどの建物の施設所有者と「浸水時における緊急時避難協力施設としての一時使用に関する協定」を締結されたところです。
また、流域治水条例第 29 条の「宅地または建物の売買等における情報提供」を今年 9 月 1 日より施行いたしまして、宅建業者が地先の安全度マップ等の水害リスク情報を顧客に説明することを宅地建物取引協会等関係団体と協力して進めているところです。県内各地での実際の取引において、宅建業者の各営業所から説明方法の確認などの問合せが数多くありまして、水害リスク情報の提供が着実に進められているところだと承知いたしております。
このように、多様な場面でソフト面での取り組みが進展しております。

Q:森林や農地等における流域治水対策について

A:流域治水推進に関する条例第 10 条では、森林と農地における雨水貯留浸透機能の確保を規定いたしております。

森林に係る対策といたしましては「琵琶湖森林づくり条例」の基本理念にのっとり、間伐等の森林整備を推進することで、その適正な保全および整備を図り、
水源涵養や土砂流出防止など、森林の多面的機能の向上に努めているところです。
特に、山腹崩壊等のおそれのある箇所については治山事業を積極的に推進し、災害に強い森林づくりを進めているところです。
耕作放棄水田の増加への対策については、集落の農地は集落みんなで守るという「集落営農」の育成や、「中山間地域等直接支払交付金」による農業生産活動の継続を支援し、耕作放棄地の発生を防止しているところであります。
また、条例第 11 条では、公園等における雨水貯留浸透機能の確保を規定しており、来年 2 月に開催予定の「第 8 回流域治水シンポジウム」で、公園やグラウンドを利用して流域に雨水をためる取り組みを推進する方法について、県民のみなさんと一緒に考えていくことといたしております。

Q:大戸川沿川の流域治水対策について

A:大戸川沿川の住民皆さまの理解を得るために、ハードとソフト両面で着実に、目に見える形で対策を実施しているところです。

ハード対策の推進にあたりましては「滋賀県河川整備 5 ヶ年計画」を策定し、河川の改修や維持管理を着実に進めることといたしております。
大戸川の下流については、概ね 10 年に 1 回程度の降雨により予想される洪水を安全に流下できるよう、平成 30 年度には、堂村橋付近までの改修を進めることといたしております。
上流の甲賀市域についても、現状の河道の流下能力を確保するために竹木伐開、竹や木の伐開でありますとか、堆積土砂除去など重点的に維持管理に取り組むことといたしております。
ソフト対策といたしましては、避難計画や浸水警戒区域指定の検討も含めた「水害に強い地域づくり計画」の策定を甲賀市信楽町黄瀬地区をモデル地区として、地域住民の方の協力のもとに、市と連携して重点的に取り組んでいるところであります

Q:流域治水の考え方の県外での評価について

A:国土交通省所管の「気候変動に適応した治水対策検討小委員会」では、平成 26 年 7 月 28 日に「今後さらに取り組むべき水災害分野の気候変動適応策(案)」を出されました。

この中では「なんとしても人命を守ること」「被害を最小化すること」を目標に、ハード・ソフトの施策を柔軟に組み合わせた「多重防御」の考え方が示されております。また、津波対策におきましては「津波防災地域づくりに関する法律」によりまして、新たに津波災害特別警戒区域等の土地利用規制が創設され、土砂災害対策としては土砂災害警戒区域等の土地利用規制が既に設けられ、それぞれ取組みが進められております。洪水対策おきましても、津波や土砂災害と同様に
引き続き災害危険区域等の既存の土地利用規制の制度の積極的な活用の促進を図ることが示されております。
この考え方は、まさに滋賀県の流域治水の考え方と合致しております。
また、これまで奈良県や岡崎市の行政担当者をはじめ、大阪大学・京都造形大学・九州大学・日本大学の研究者などから要請を受け、治水の先進的な取り組み
として、滋賀の流域治水条例の導入経緯や「地先の安全度マップ」の内容について、意見交換を行っているところです。
今年 9 月 16 日の NHK「おはよう日本」では、全国に先駆けて実施しております水害履歴調査の取り組みが住民の水害意識を向上させ、的確な避難行動にも役立っていることを評価いただき、放映されたところです。
本年 9 月に開催されました全国「いい川・いい川づくりワークショップ」では、住民の視点から捉えた「地先の安全度マップ」を活用した、本県の流域治水の取組みが評価され「広松 伝 賞」を受賞いたしました。
広松 伝さんは、埋立て寸前であった福岡県の柳川の堀割を、復活再生した功労者としても有名な方であります。

この様に、様々な場面、様々な機会で、本県の流域治水の取り組みが高く評価され始めていると認識いたしております。