代表質問⑧教育問題について

教育をめぐる問題は、様々で、議会質問でも頻繁に出てくる項目です。国では、少人数学級について、財務省と文科省とで見解を異にしますが、滋賀県では、独自に少人数学級を推進しています。

Q:小学校1年生の40人学級復活を主張する財務省の 動きをどのように受け止めますか。滋賀県における少 人数学級編制の考え方と併せて、知事に伺う

A:学校を取り巻く環境が複雑化・困難化し、きめ細かな指導が教員に求められる中で、子どもたちの学ぶ力を育てるための環境を整えるべきときに、40 人学級に戻すとの財務省の主張は、本県で少人数学級編制を進めてきた考え方とは相容れないものであると認識し、憂慮しております。 こうした中、先月末に教育委員会に対しまして、35 人学級編制についての効果の検証をお願いしましたところ、平成 25 年度から中学校 2 年生と 3 年生に35 人学級編制を拡充した学校では、次の4点について、効果が認められたとの報告を受けました。

1点目は、全国学力・学習状況調査の平均正答率が県平均を 2.5 ポイント上回り、学力面での効果があったこと。
2点目は、不登校在籍率が県平均を 0.06 ポイント下回り、不登校状況が改善されたこと。
3点目は、いじめの認知増加率が、県平均を 1.66ポイント上回り、いじめの早期発見につながったこと。
4点目は、暴力行為の増加率が県平均を 0.08 ポイント下回り、暴力の発生が抑制されたこと。
こうした効果について、先般、文部科学省にもお伝えしながら、小中学校の全学年において、国の学級編制の標準を 35 人以下にするよう政策提案をしてきたところです。
いずれにいたしましても、一人ひとりの子どもに教員の方々はじめ多くの方の目と心が振り向けられる 35 人学級編制を目指していくべきと考えております。

Q: 先の9月議会における知事答弁を踏まえ、この度の補正 予算に挙げられた「学ぶ力パワーアップ事業」のねらい等につ いて、教育長に伺う。

A:1問目のこの度の補正予算に計上した「学ぶ力パワーアップ事業」のねらい等、についてでありま すが、子どもたちの「夢と生きる力」を育むためには、繰り返し努力したことを認め、能力や可能性を引き出すことや、授業を改善し、学習意欲や興味・関心をもって、主体的に学ぶことにより、一人ひとりの「学ぶ力」 を育てることが必要であります。 このことから、基礎的な学びや読書などを通して、読む力や書く力をつけていくこと、また、つまずいた点を学び直していくことで、学ぶ喜びを知り、子どもたちが自ら意欲的に取り組むようになることをねらい として事業を組立てました。

「学び直し」を図る事業としましては、すでに小学校3年生から小学校5年生までと、中学校1年生、2年生を対象に、つまずき診断テストや、学び直しプリトによる取組を進めているところでありますが、特に小学校5年生、中学校2年生は、学習内容が増加し、内容も深くなり、つまずきが顕著になる学年であることから、「学ぶ力パワーアップ事業」を計上させてい ただいたところであります。
これらの学年の特徴は、小学校5年生では、物語の文章量が増えたり、割合や数の関係など、抽象的な思 考への転換が求められております。
また、中学校2年生では、国語で扱うテーマが日常的なものから社会的なものに広がり、数学では図形の証明など論理的な思考が本格的に扱われるようになり ます。
そのため本事業により、少人数指導やティームティーチングなどによって、個々の子どもに目と心を行き届かせ、子どもたち一人ひとりの学ぶ力を高めていきたいと考えております。

Q:本県のこれまでの読書活動の課題と、子どもたちに読解力を身につけさせるための対策について、どう認識しているか、教育長に伺う。

A:議員ご指摘のとおり、子どもたちの学ぶ力を向上させるためには、読解力を身に付けることがきわめて重要であります。 著者の意図を深く読み解くには、繰り返し読むことで、思考力・判断力を高め、論理的に、また、批判的に読むことが重要です。

また、読解力は家庭での学習時間など、学習意欲や学習習慣、生活習慣とも関係しているともいわれます。そのため、本に親しみ、自分から読書する習慣を身に付けるとともに、文章を繰り返し読んだり、声に出して読んだりすることが大切です。
また、目的や課題に応じて様々な文章・資料を読み、読んだことを根拠にして考えを述べたり、書いたりすることが必要です。
こうしたことから、現在策定作業中の「第3次滋賀県子ども読書活動推進計画(案)」では、学校における読書活動の推進を重点取組事項に位置付けております。
特に、学校では、各教科の授業で読んだり、書いたりする活動を増やすことで、読解力を身に付けるとともに、子どもたちの自発的・主体的な読書活動を推進することが重要であることから、学校図書館をより使いやすくし、図書館を活用した読書活動・学習活動が充実できるよう、支援に努めてまいりたいと考えております。

また、家庭内においても、子どもと大人が一緒になって本や文字に親しむことが大切であり、家庭に向けて読書啓発する取組などを引き続き行っていきたいと考えております。
このような取組により、読解力や読書意欲を育み、学校・家庭・地域が一体となって、県全体で子どもたちの学ぶ力の向上につなげていきたいと考えております。

Q:児童・生徒の暴力行為にかかる本県の現状には、ど んな今日的な特徴があり、そこにどんな背景があると認 識されておられるか、教育長に伺う。

A:本県の暴力行為の現状と特徴につい てでありますが、小・中学校における 1,000 人当たりの暴力発生件数は、全国平均と比較して低いものの、議員御指摘のとおり、平成 23 年度から 25 年度にかけて、小・中学校 共に増加率が急に高くなっております。

また、複数回暴力をふるうケースについては、3回以上の割合が小学校で 30%弱、中学校で 15%弱とな っております。
その状況については、自分の思い通りにならない時に、感情をコントロールできず暴力行為に至ってしまうケースが多いなどの報告を市町から受けていると ころであります。
次に暴力行為を起こす背景につきましては、家庭や学校など子どもを取り巻く環境の変化や、子どもが経験するストレスの増大、感情を抑えられず、考えや気持ちを言葉でうまく伝える力や人の話を聞く力が低下していることなどがあると捉えております。

Q:どんな対応を考えておられるか、教育長に伺う。

A:暴力行為への対応についてでありますが、児童・生徒の指導に当たっては、子どもの状況を理解し、子どもの内面に迫る指導を行うことと、学級活動など集団づくりをきめ細かく行うことが重要です。

特に暴力を起こす子どもには相手の気持ちがわからない、自分の思いがうまく伝えられない、自分の感情が抑えられないなどの面が見られることがありま す。
このため、教員は日ごろから子どもに寄り添い、子どもとの信頼関係の中で、子どもを取りまく状況や実態を知るとともに、どのように感じ、考えているかな どを理解することが大切です。
また、よりよい集団づくりを進めることが重要であり、学級活動等を通して、互いの良さを認め合い、信頼や絆を深めあえるような人間関係づくりを進めて いくことが大切であると考えております。
さらに、発達障害のある子どもや愛着に課題を抱える子ども、強いストレスのある子どもについては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど、専門家の助言を求めることなどにより、早期対応を図ることも重要であると考えております。

Q:大切なことは、そんな暴言や暴力で自分を表現しよ うとした子どもの心の内に迫り、そして、その子のその後 の成長に、どう活かす指導をしていくかであると考えます が、教育長の考えを伺う。

A:暴言や暴力で自分を表現しようとした子どものその後の成長に、どう活かす指導をして いくかについてでありますが、暴力行為が発生した場合には、まず何よりも暴力を受けた子どもの立場に立って、毅然とした指導を行う ことが重要なことは言うまでもありません。しかしながら、こうした指導だけでなく、暴力に及んだ子どもに寄り添い、なぜそのような行為に至ったのかなど、子どもの声にしっかりと耳を傾け、その背景に迫るとともに、発達の観点からも検討し、課題に 向けて取り組んでいくことが重要であります。

このように、学校教育のあらゆる場面で、温かく粘り強く指導することで、人を思いやる心を芽生えさせ、共感的人間関係を育成することができ、その後の 成長につながっていくものと考えております。