⑨流域治水事業について

ダムの本体工事が「凍結」となっている大戸川ダム事業を検証する幹事会が、10月30日、4年9か月ぶりに再開されました。ダムの目的が変わっていく中で、大戸川ダムの効果、今後について、現状とこれからについて、質問致しました。

Q;ダム検証とはどのような制度に基づき実施されているのか

A;ダム検証は、平成22年9月に国土交通大臣から、全国83のダム事業について、検証を進めるよう、地方整備局長等や都道府県知事に対して指示または要請があったものでご
ざいます。検証に当たりましては、平成10年度から実施されております公共事業の再評価の枠組みを活用することとされ、「ダム事業の検証に係る検討に関する再評価実施要領細目」に基づき、実施することとされております。

Q;ダム検証において「ダムを含む案が有利」となれば、すぐにダム本体工事は実施されるのか

A;このダム検証は、ダム事業の継続または中止の方針を検討するものであり、ダム本体工事の実施時期を定めるものではないと承知いたしております

Q;第2回大戸川ダム検証幹事会で提示された6つの治水対策案と大戸川ダム建設事業についてどのように検討・評価するのか

A;先般開催された第2回幹事会におきましては、ダムの代替案として6 案の淀川水系全体の事業費がそれぞれ、約3,900億円から6,100億円と示されましたが、ダムを含む淀川水系全体の事業費は示されておりません。次回会議では、ダムを含む全体事業費が示されたうえで、ダムの代替案とのコスト比較や、実現性、環境への影響などにより評価されるものと認識いたしております

Q;石居いしづえ橋上流部左岸において築堤・護岸工の河川改修工事が施工されており、地先の安全度は高まると考えられるが、現在の河川改修工事の進捗状況と、河川改修後の石居いしづえ地先で想定される浸水深について伺う

A;まず、河川改修工事の進捗状況です。改修予定区間の4.5キロメートルのうち、最も流下能力が小さい石居いしづえ橋ばし上流の左岸側において、河川を拡幅するための新しい堤防の設置を、ほぼ完了いたしております。次に、河川改修後、想定される浸水深についてでございますが、10年に1回程度発生する洪水においては、現状では最大3m程度の浸水が発生いたしますが、河川改修後では最大2m程度の浸水となります。200年に1回程度発生する洪水におきましても、河川改修後では、浸水深は5mを下回るものの、依然として浸水は残ると想定されております。

Q;大戸川ダムが設置される場合、ダム放流により水量が長期間安定化して流れるため、古川沿川の内水氾濫の浸水時間は長くなるのではないかと予測されるが、知事の所見を伺う

A;大戸川ダムの洪水調節の方法は、毎秒280トンの定量放流として設定されております。洪水時には、ダムによる洪水調節効果により、大戸川の流量が低減され、古川沿川の浸水深は浅くなることから、浸水範囲は縮小されます。しかし、洪水の後には、ダムの放流が続くことから、一部農地では浸水時間が長くなると想定され、このことが課題であると認識しております。

Q;大戸川ダム建設後において、200年確率降雨があった場合の想定浸水深を検証する必要はないのか

A;大戸川沿川への大戸川ダムの効果を定量的に評価するため、ダム建設後における地先の安全度マップを作成する必要があると認識しており、現在作成しております。できるだけ早い時期に作成できるよう努めてまいりたいと存じます。

原文です↓

この項のはじめに「大戸川ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」の第2回幹事会の開催について質問します。

ダムの本体工事が「凍結」となっている大戸川ダム事業を検証する近畿地方整備局と関係自治体(滋賀県や京都府など7府県市)の会議が10月30日、4年9カ月ぶりに再開されました。近畿地方整備局が治水対策とし提示した案は、淀川本川と大戸川での河道掘削、大戸川から瀬田川へ放水路建設、既設2ダムの嵩上げ、雨水貯留施設や雨水浸透施設を設置する案などで、概算事業費は約3900億~6100億円とする6案が提示されました。

また、大戸川ダムの総事業費を点検した結果、県道付け替え工事の計画変更に伴う増額や工事延期に伴う事務費の増額など約82億円を増額し、残事業費を約478億円、総事業費約1162億円となるとの報告もありました。

次回以降の会合で、ダム事業を含めて各案のコストや安全度などを比べ、ダムの継続か中止かの結論につながる対応方針をまとめるとのことです。そこで、大戸川ダム事業検証に関して

①そもそもダム検証とはどのような制度に基づき実施されているのか。

②ダム検証において「ダムを含む案が有利」となれば、すぐにダム本体工事は実施されるのか。

③     2回大戸川ダム検証幹事会で提示された6つの治水対策案と大戸川ダム建設事業について、どのように検討・評価されるのか、伺います。

次に、滋賀県は、内水氾濫も考慮した浸水予測「地先の安全度」を県下一円に有していますが、2013年(平成25年)台風18号による被害を踏まえ、大戸川ダムにより、どのような効果があるのか、県独自の検証結果について質問いたします。

平成25年台風18号に伴う大雨により最も広範囲に浸水被害を受けた石居橋上流部石居地先には、一級河川大戸川と一級河川天神川の間に、普通河川古川が合流しています。この古川は川底が大戸川と連続している構造となっていることから、大戸川の水位があがると、古川から大戸川への流入が困難となり、さらには大戸川の流水が古川に逆流します。そのことから、大戸川の水位上昇により内水氾濫が発生し、県の公表している地先の安全度マップでも、大雨が降った場合に想定される浸水深は最大5m程度の地先となっています。現在、④石居橋上流部左岸において築堤・護岸工の河川改修工事が施工されており、地先の安全度は高まると考えられますが、現在の河川改修工事の進捗状況と、河川改修後の石居地先で想定される浸水深について伺います。

また、⑤大戸川ダムが設置される場合、ダム放流により水量が長期間安定化して流れるため、古川沿川の内水氾濫の浸水時間は長くなるのではないかと予測されますが、知事のご所見をお伺いします。

最後に、我が国における河川整備の当面の目標と浸水警戒区域の指定について質問いたします。現在、日本の河川整備は、小河川では10年確率降雨の洪水を、大河川ではおおむね30年から50年確率降雨の洪水を安全に流下させることが当面の目標となっています。今年9月の鬼怒川水害をふまえ、我が会派が9月定例会議の代表質問において指摘したとおり、河川整備は今後も計画的に実施していくことが重要である一方で、河川整備にも限界があることを再認識すべきと考えています。

現在進めている河川整備が終わったとしても、鬼怒川で起きたような河川整備の規模を上回る雨が降る可能性は否めないのです。国土交通省が平成27年1月に公表した「新たなステージに対応した防災減災のあり方」でも指摘されているとおりです。本県においては、こういった国の方針を先取りし、流域治水条例を制定・施行しておりますが、流域治水条例では、200年確率降雨において3m以上の浸水が予想される区域を踏まえ、浸水警戒区域の指定を行うことができる旨の規定があります。⑥大戸川ダム建設後において、200年確率降雨があった場合の想定浸水深を検証する必要はないのか、知事にお伺いします。

また、⑦日本における治水事業の当面の目標が、おおむね30年から50年確率降雨の洪水を安全に流下させることである中で、どのような洪水からも命を守るためには、ダムがあってもなくても流域治水の取り組みが必要となると思いますが知事のご所見をお伺いし、質問を終わります。