一般質問;救急医療体制を巡る諸問題について

【救急医療体制を巡る諸問題について】

平成27年の県内救急出動件数は、61,028件。搬送人員は57,134人と、一日約167件出動。 高齢化と共に、高齢者の利用も増えていますが、急病理由の全体の約半数以上、成人の約70%が軽症とのデータも出ています。

この点、平成26年の総務省消防庁・厚生労働省の連名通知での調査によれば、重症患者に対する搬送先が決まらないとされる照会6回以上も全国2番目に低く、救命救急センターでの受入率も98.6%と、全国で6番目に高いことから、救急搬送においては、問題がないようにも思われます。(平成27年度 メディカルコントロール協議会における救急実施基準検証結果は、そのままでよしとされています)

しかしながら、平成26年の搬送人員約5,600人のうち、救命救急センターでの受入数は、約2万人で、そのうち重症以上が約3900人でした。

確かに、診療してみないとわからない、二次救急も担っていますが、救命救急センターは、救急搬送のみではありません。

救急搬送以外でも自家用車やタクシーなどで多くの方が診察を受けるため、平成21年度で11万人強の受入れ、その内、重症患者は2.8%となっており、改善が必要とされています。診療報酬改定で平成24年からは院内トリアージ(病院で重症度判定をすること)実施料が導入されましたが、現状で、日常で今まだ大丈夫だから、それでいい、のか?災害時の備えは日頃からであるならば、今の体制でいいのか?移送日の負担コストの課題があるにしても、民間救急や福祉・介護タクシーとの連携も必要なのではないでしょうか。

年々救急搬送が増える中、救急医療が崩壊する前に、滋賀県としてどうしていくか、消防を担う市町や関係各位と連携して、あるべき姿を追っていく事が必要と考えます。

そこで、救急医療体制を維持するためにも、適切な医療受診をどのようにしていくか、今回は主に、救急車の適正利用の側面から質問しました。

Q;共通ダイヤルによる救急医療相談センターの導入と課題について伺う

A;平成27 年7月時点で導入されているのは全国的には6自治体に留まっているという調査結果があり、全国的な広がりはこれからという状況であると認識をしている。
導入に当たっては、専門の相談員、特に医師の確保、小児救急電話相談♯8000 との連携、さらには運営費用の確保等、様々な課題があり、先行自治体の状況を十分、研究していきたいと考えている。

Q;#8000番の効果について

A;小児救急電話相談♯8000 番は、限られた小児科医や小児医療機関に負担がかかり、現行の小児救急医療体制の維持に支障が生じないよう、医療機関への軽症患者の集中を緩和しつつ、県民の皆さんが安心して子育てをしていただける環境整備を図ることを目的として実施している。

♯8000 番については、「救急医療ネットしが」や市町の乳幼児健診の際に配布していただいている冊子「赤ちゃんと子どもの応急手当て」さらに新聞広告等で啓発をした結果、平成25 年度には18,912 件であった相談件数が平成27 年には20,306 件と増加し、また相談件数を年少人口で除した♯8000 番の利用率について、本県は8.01%で全国第5位という実態。

また、相談の結果、119 番や医療機関への速やかな受診を薦めなかった割合が平成25 年度には80.0%であったが、27 年度には86.2%まで上昇し、小児科医や小児医療機関の負担軽減と現行の小児救急医療体制の維持に効果があったと考えているところ。

今後も、医療機関への軽症患者の集中を緩和しつつ、県民の皆さんが安心して子育てをしていただける環境整備を図るため、様々な機会を捉えて啓発を実施していきたいと考えている。

Q;♯ 8000番が効果を生んでいるように、一般向けの相談支援センターについて取り組めないのか、また、その体制について過去どのように検討がなされたのか

A;救急の体制については、県内の救急関係者等で構成するメディカルコントロール協議会で議論をいただいている。

#8000 番ができて、それ以外の大人の方等の救急対応の相談体制ができないのかという趣旨でご質問いただいたが、子どもの場合は自らの症状を上手く説明できないであるとか、朝まで待つことが困難である等様々な事情あるかと思う。

大人の場合は朝まで待てる場合や自ら判断ができる場合も含めて、子どもの場合とやや状況が違うのではないかなと私なりに思っている。具体的に今後、滋賀県においてどのような体制が望ましいのかということについて、この場で問題提起をいただいたということも、関係者との意見交換の中に含めて検討もお願いしていきたいと考えている。

Q;♯ 8000番は地域医療介護総合確保基金の対象事業となっているが、一般向けの相談支援センターについてこの基金の対象事業となるのか

A;例えば#7119 のような事業であれば、対象とならない。

Q;救急コールトリアージ(119番の時にする重症度判定)と、救急搬送トリアージ(救急車到着時での重症度判定)の取り組みの現状について伺う。

A;県内の消防局で実施しているところは、現在のところはない。指摘されたように、本来の救急業務を円滑に実施していくためには、不要不急の救急搬送の抑制をしていくことが大変重要。こうしたことから、各消防本部において、広報紙やホームページ等により救急車の適正利用を周知しているところ。

Q;転院搬送における病院救急車や民間救急及び福祉・介護タクシー等の利用における現状と課題について伺う。

A;本年3月31日付けで消防庁次長および厚生労働省医政局長から「転院搬送における救急車の適正利用の推進について」という通知があった。県内でも、緊急性が乏しいにも関わらず、遠方の医療機関へ、また人手の少ない土日・夜間に、あるいは診療所から病院への転院搬送に消防機関の救急車が使われる状況がある。病院救急車の利用においては、「搬送のための人員、例えば運転手、の確保が困難である」、「転院搬送に関する院内のルールが徹底されていない」といった課題がある。また、民間救急および福祉・介護タクシーが緊急性の乏しい転院搬送に利用できるということについて、医療関係者の認識が低いことが課題としてあげられる。

県では、国からの通知を受け、県医師会、県歯科医師会、病院協会長あて通知を発出し、緊急性の乏しい転院搬送に対しては、「医療機関が所有する病院救急車の活用すること」、また、「消防機関が認定する患者等搬送事業者、いわゆる民間救急の活用すること」を内容とする、救急車の適正利用をお願いしたところ。また、緊急性の認められない転院搬送や日常の医療機関の受診等には、福祉・介護タクシーの利用について検討いただくよう、県医師会、県歯科医師会、病院協会に対し、機会を捉えて要請をしていきたい。

 

↓以下、原文です。

私達が、安心な社会で暮らしていく上で、救急医療体制は重要なもののひとつであり、平成24年の滋賀県県政世論調査の結果によりますと、力を入れて欲しい分野として医療福祉分野が最も多く、その中でもがん対策に次いで、救急医療の充実が望まれています。

平成27年中の全国の救急自動車による救急出動件数は、消防庁の速報値によりますと、前年比6万6,247件増の605万1168件。搬送人員は前年比5万9962人増の546万5879人で、救急出動件数、搬送人員ともに過去最高となりました。

滋賀県でも救急自動車による救急出動件数は、前年比1574件増の61028件。搬送人員は前年比1161人増の57134人と、増加しており、1日に約167件救急車が出動し、約157名を病院へ救急搬送していることになります。

救急搬送増加の主な要因は、急病、一般負傷、転院搬送の順となっており、特に高齢の搬送者の占める割合が高くなっています。

もっとも、救急車の利用状況をみてみますと、そのうち、約半数以上が軽症であることから、救急車の適正利用に向けた取組みが必要といえます。

救急車の適正利用は、速やかに適切な医療機関へ搬送するという本来の救急業務を円滑に遂行するだけでなく、二次救急医療機関が、本来の救急患者の診療を滞りなくする上でも非常に重要な課題であると認識しています。

少し前になりますが、日本政策投資銀行の調査によりますと、小児のいる核家族世帯と成人および高齢者の単独世帯の合計が全世帯に占める割合と、救急利用率の関係を都道府県別にみると、対象世帯の構成割合の増加が救急利用率の増加に結びついている可能性が高いものと推察されています。滋賀県では、2010年と2035年で比較して単独世帯全般で増加しますが、特に高齢者の単独世帯が1.8倍になると予測しており、より救急利用率の増加が考えられるのではないでしょうか。

総務省消防庁ではこれまで、救急車の適性利用等のための広報活動や利用マニュアルの配布などを通じて、増加する救急需要への対応に努められていますが、高齢化の進展などにより、救急需要は今後ますます増大する可能性が高いことが示されています。

このような状況を踏まえ、消防庁では、平成23年度には「社会全体で共有する緊急度判定(トリアージ)体系の在り方検討会を発足させ、「家庭での自己判断」「電話相談」「119番通報」「救急現場」の各段階におけるプロトコル(手順)について検討されています。

そこで、軽症患者搬送の減少に向けて、まず「電話相談」についてお伺いします。

近年の全国的な救急出動件数の大幅な増加は、高齢化、核家族化の進行を背景とし、住民が救急要請すべきか自力受診すべきか迷った場合に119番通報するといったケースの増加が要因の一つであると考えられることから、受診可能な医療機関の情報提供に加え、より医学的に質の高い救急相談体制が求められています。

モデル事業実施地域においては、119番通報のうち、緊急度の高い通報以外の通報件数の減少、救急医療機関への時間外受診者数の減少及び救急搬送件数における軽症者の割合の減少がみられたと報告されています。

東京都の共通の短縮ダイヤル#7119を始め、全国の都道府県でも救急医療相談センターを設けているところもありますが、滋賀県では、救急医療ネットしがとして、各地域ごとに自動音声サービスで医療機関が案内されているのみです。

そこで、共通ダイヤルによる救急医療相談センターの導入と課題について、健康医療福祉部長にお伺いします。

また、滋賀県では、小児救急医療については、保健医療圏域によっては二次救急医療機関が初期救急も担っていることから、小児科医師に負担がかかっていることなどを背景とし、小児救急医の負担軽減を図るために、平成26年度からは、地域医療介護総合確保基金を利用して、小児救急相談について#8000を開設されています。

#8000の効果について、健康医療福祉部長にお伺いします。

次に、「119番通報プロトコル」について伺います。救急相談センターがない中で、119番には多くの電話がかかってきます。その中で、緊急度、重要度に合わせた取組みも始まっているところもあります。

先日、先駆けて救急コールトリアージに取り組まれている横浜市消防局に伺いました。横浜市では、救急救命の充実を通じて消防機関と医療機関の連携が進む中、救急車の適正利用に向けて、10年ほど検討された結果、119番通報時に緊急度に応じた救急体制のトリアージを導入されています。

救急コールトリアージの取組みの現状について、総合政策部長にお伺いします。

また、救急車の利用は、あくまでも救急利用目的となることから、緊急性を要しないなど目的に合致しない場合は、搬送しないということもあります。

この点、東京消防庁では、救急隊員により救急現場で緊急性が低いと判断された方に対し、自力通院を促す「救急搬送トリアージ」を平成21年から本格的に実施されています。昨年は、速報値で682名の方に対して救急搬送トリアージを実施し、492名72.1%の方に同意を得て、自力通院して頂いたと伺っています。

救急搬送トリアージの取り組みについての現状を総合政策部長にお伺いします。

次に、転院搬送についてお伺いいたします。

救急搬送のうち、転院搬送は約10%ほどを占めています。転院搬送については、在宅療養患者の状態が悪化した場合に、緊急性が高くないにもかかわらず、搬送手段として、救急要請したり、一度救急車で搬送して応急処置をした後、より適切な治療を行える医療機関に搬送するなど、適正とはいえない利用がされている場合もあるといわれています。2015年に全国消防協会が全国の消防本部を対象にしたアンケート調査によれば、78%が転院搬送に関して問題があると回答し、管轄区外への転院搬送、緊急性のない転院搬送などが挙げられています。

2006年に転院搬送ガイドラインをまとめ、ルールを定めた横浜市では、ガイドラインの検討がされた頃から、特に緊急性が低いと思われる病状固定患者の搬送が著しく低減し、特に転院搬送に関し、代表者氏名の署名捺印を求めるなど一定の手続きを踏むことにしたことで、不適切な転院搬送の要請に抑止効果を発揮したと伺っています。

消防庁と厚生労働省は今年3月末に初めて「転院搬送における救急車の適正利用の推進について」を全都道府県に通知しました。

医療機関の理解を求めると共に、搬送を必要とする患者の搬送の課題をどう解決していくかが、重要となります。病院救急車や、民間救急及び福祉・介護タクシーといった利用が考えられますが、現状と課題について、健康医療福祉部長にお伺いします。