意見書討論

社会保障の問題は数々の課題があり、法律を制定する国会においては勿論のこと、地方においても議論があります。そのような中、年金積立金の国内外の株式運用比重を高める動きなどに関して、会派を代表して、討論を致しました。

チームしが県議団を代表し、意見書第25号「専ら被保険者の利益のための年金積立金の安全かつ確実な運用に関する」意見書に対する賛成の立場で討論させて頂きます。

政府は、成長戦略である「日本再興戦略(2013年6月14日閣議決定)」などにおいて、厚生労働省が所管する年金積立金管理運用独立行政法人「GPIF」に対し、リスク性資産割合を高める方向での年金積立金運用の見直しを掲げ、今年10月末には、GPIFが、株式運用の割合を5割に高めることを柱とする資産構成の目安を発表しました。

GPIFが、管理・運用する公的年金である厚生年金と国民年金の積立金はあわせて約130兆円にのぼります。積立金を債券や株などに運用し得た収入を年金給付に活用することになっていますが、あくまでも「年金制度の運営の安定に貢献する」ことがGPIFの最大の使命です。

この年金積立金は、国民が毎月こつこつ支払う保険料が元手です。

意見書でもふれていますが、公的年金は、高齢者世帯収入の7割を占め、6割の高齢者世帯が年金収入だけで生活しています。特に高齢化率の高い都道府県では県民所得の17%前後、家計の最終消費支出の20%前後を占めているなど、年金は老後の生活保障の柱となっています。

厚生労働省も、年金積立金について「原資となる保険料は投資を目的として徴収されたものではなく」「老後の給付に充てるために一時的に預かっているもの」なので「安全運用が基本」とした報告書をまとめています。

確かに、2012年度は、円安・株高で11兆2222億円の収益とされていますが、2008年度は、9兆3481億円の損失が計上されており、株式運用の在り方については慎重になされるべきです。

株式運用の比率が高いカナダ基金では900名、カルフォニア州の公務員年金基金では2600名の職員を有すると仄聞していますが、GPIFの職員は80名ほどで、実際の運用は、金融機関への委託で、外国株式に至っては再委託もあり、運用責任の所在が不明といえます。

この度の基本ポートフォリオの変更では、海外投資を新興国へも積極的投資して外国債券を約12%から15%へ、外国株式を約17.4%から25%へ変更することから、運用について懸念されるところです。

また、国内株式については、現在の18%強から25%への変更が示されています。積立金は、約130兆円ですから、1%増やすだけでも1兆円以上の資金が国内株式市場に流れ込むのであり、7%増加のインパクトについては、言わずもがなです。

この変更が、日銀の追加緩和とほぼ同時期に示されたことから、いわゆる「公的マネー」による株価の下支えとなり、海外投資家の関心も高いとも言われていますが、公的年金積立金が経済対策に利用されることは、あってはならないことです。

そうではないにしても、実体経済と乖離した株価上昇となれば、その後株価が下がるリスクも高まります。

それ故、意見書では、このような状況下で、公的年金積立金を 変動が著しい株式等のリスク性資産運用割合を高める方向での急激な変更を行わないよう求めています。

更に、GPIFには、保険料拠出者である被保険者の意思を反映できるガバナンス体制がないことから、労使をはじめとする利害関係者が参画し、意思を反映できるガバナンス体制の構築を求めるものです。

以上により、意見書第25号「専ら被保険者の利益のための年金積立金の安全かつ確実な運用に関する」意見書に対し、議員各位の賛同をお願いします。